石細工の誇り

石細工の誇り

フランク・ロイド・ライトが設計した旧帝国ホテルの美しい装飾を可能にしたのは、大谷石のもつ軟らかさと、天下一品の加工技術をもつ職人の技だった。
ホテルの建設現場では、100人を超える職人が、ライトの図面を見ながら、トントン、コツコツ、原石を芸術に創り上げていった。
そんな大谷石の仕上げ職人の誇りを受け継ぐ一人、渡邉哲夫さんの工房を訪れた。
「手で削った、石の肌は艶が違う。大工のカンナと同じ。相手は、一つとして同じものがない自然のもの、ダイヤモンドの刃がついた機械では均一に削れても気品は出せない。石工は、石に合わせて、道具を研ぎ、刃の種類を変える。大谷石には、ミソと呼ばれる茶色をした軟らかい部分の他に、青っ玉と呼ばれる玉石など、いろんな硬さの鉱物が混ざっている。それを微妙に調節しながら削っていくのが腕のみせどころ。表面仕上げの面出しでもっとも難しいのは、磨き。平面をタタキ※一本で削り出していく。触ってみると、しっとり艶があるのが最高の仕上げ。大谷石は、面白く、難しい石。だからこそ、飽きない。」
大谷石を有名にしたのは、職人の誇りだった。

※サシバ、リョウハともいう

2019.03.26

大谷石彫刻家 渡邉哲夫さん

渡邉哲夫公式ウェブサイト https://watanabe-tetsuo.jp/