JR宇都宮駅から北西におよそ9km、市街地を抜け、多気山と丘陵地が大きく見え始めると景色は一変し、鋭く切り立つ岩山と灰白色の岩肌に蔦が絡まる奇岩群に囲まれる。ここは「大谷石」の産地、宇都宮市大谷地域。約1500万年前に起こった海底火山の噴火が、石の文化の源となる膨大な凝灰岩の地層を産み出した。
この大量の凝灰岩の岩山に目を付けた人々は、この地でこの石と共に暮らしてきた。
古くは、縄文時代に岩山の洞穴を住居として利用し、古墳時代には横穴を掘って墓地とした。奈良・平安時代には、日本最古の磨崖仏とされる大谷観音を、自然の岩窟の壁面に彫りだし、信仰の場をつくりだした。大量の石に恵まれた宇都宮の人々は、長い時の流れの中で、この石に祈りや願いを「彫り」、そして石材として「掘って」きたのだ。