石を「掘る」文化の証が、かつて大谷に約250 ヶ所あったという採掘場とその跡地である。大谷の採掘場の多くは地下にあり、地表下100mに設けられた採掘場もある。坑道の先に天井と壁・柱で構成された巨大な空間が現れる。その天井高はおよそ30m、全てがひとつの石の塊で、壁面に採掘の痕跡が残る。
昭和30 年代に機械が導入されるまで、採掘は手作業で行われ、わずか18×30×90cmの石材1 本を切り出すために、石工は約4,000回もツルハシを振るったという。この広さに到達するまでには気が遠くなる人の手がかかっているのだ。
冷気が張り詰める坑内には、天井を支えるために残した柱が立ち並び、行く先々を照らす明かりが重層的な影を生み、神秘的な情景を醸し出す。巨大な柱の先を曲がると、再び柱が立ち並ぶ光景が目前に広がり、次第に方向感覚が失われていく。ここは、採掘産業を支えた石工たちが、手作業で掘りだした巨大な地下迷宮なのである。