農村部には、田園と大谷石が一体となった素朴な景観が広がっている。30棟以上の石蔵が集まる集落では、掘り跡が生々しい石壁や屋根瓦の代わりに大谷石をのせた石屋根も目に入る。かつて石工だった家では、蔵の窓周りに梅や松の彫刻細工を施し、思い思いに自分の蔵を飾り立て、玄関先では石造りのカエルが「無事カエル」主人を出迎える。大谷石は、一般的に神社の鳥居、野仏、供養塔、祠などに使われるが、宇都宮の農村部では、田んぼの土留、農業用ポンプ小屋、消防器具庫にも大谷石が使われる。田園風景の中を散策するたび、自由自在に姿を変えた大谷石との出会いがある。