城下町・門前町として発展した宇都宮の市街地では、江戸時代以降、都市づくりに大谷石を使い続けてきた。都市のシンボルである二荒山神社の石垣をはじめ、教会や寺、公共建築、豪商の屋敷、民家の塀まで、用途・身分・宗教を問わず大谷石が使われた。
大谷石で外壁を覆うカトリック松が峰教会聖堂では、浮彫を施した大谷石タイルを複雑に組み合わせ、象徴的な丸いアーチや西洋中世の教会建築の意匠を実現した。対照的に、日本聖公会宇都宮聖ヨハネ教会聖堂では、同じ大谷石タイル張りでありながら、石の自然な表情を活かした素朴なたたずまいの敬虔な信仰空間をつくりだした。また、耐火性に優れ調湿・消臭効果を備える大谷石は、食品醸造に適し、味噌や酒、醤油などの商家の蔵に用いられた。江戸時代から続く老舗では、いまでも石蔵で宇都宮の味をつくりだしている。
建造物以外にも、人々の憩いの場となる庭園の花壇や園路、道路の敷石にも用いられた。やわらかな大谷石は様々な表現・活用を可能とし、多様なデザインを欲した都市づくりに重宝されたのである。